
粉体塗装とは、粉末状の塗料を静電気で部材に付着させ、炉で加熱して溶かし、硬い塗膜にする塗装です。溶剤を含まない塗料を使い、1回で厚い塗膜をつくれるため、フェンスや架台、パネル、盤の筐体など、錆や衝撃に強い仕上げが求められる金属部材に使われています。
この記事は、金属部材の塗装を発注する設計・購買・生産技術の方に向けて、粉体塗装の仕組みと工程、向く部材と向かない部材、剥がれる主な原因、依頼するときに伝えておくことをまとめたものです。
粉体塗装とは|粉の塗料を焼き付けて塗膜をつくる塗装
粉体塗装の塗料は、樹脂・顔料・添加剤を粉にしたもので、シンナーなどの溶剤や水を含みません。この粉を帯電させて吹き付けると、静電気で部材の表面に付着します。そのまま炉で加熱すると、粉が溶けて流れ、硬化して一枚の塗膜になります。
塗料の樹脂には、防食性と密着性に優れるエポキシ系、紫外線に強く屋外に向くポリエステル系などがあり、使う場所に合わせて選びます。
液体の塗料を塗ってから炉で焼き付ける焼付塗装との違いや、どちらを選ぶかの考え方は、焼付塗装と粉体塗装の違い|仕上がり・耐久性・費用の決まり方と選び方で解説しています。
焼付塗装そのものの仕組みと工程は、焼付塗装とは?通常の塗装との違いと工程、向く部材をご覧ください。
粉体塗装の工程
粉体塗装は、前処理から梱包まで、おおむね次の5つの工程で進みます。工程ごとに、発注する側から伝えておくと仕上がりが安定する情報があります。

- 前処理:油分・錆・汚れを落とし、化成処理やブラストで塗料が密着する面をつくります。仕上がりの持ちを大きく左右する工程です。
- 吊り下げ・マスキング:部材をフックで吊るし、ねじ穴やはめ合い面など塗らない箇所を耐熱の材料でふさぎます。吊るした箇所には塗料が付きにくいため、どこを吊るすかも仕上がりに関わります。
- 静電塗装:帯電させた粉の塗料をガンで吹き付け、部材に付着させます。
- 焼付:炉で加熱し、粉を溶かして硬化させます。
- 冷却・検査・梱包:冷ましてから外観と膜厚を確認し、傷が付かないよう梱包します。


粉体塗装の特徴
| 観点 | 粉体塗装の傾向 | 発注のときに気をつけること |
|---|---|---|
| 塗膜の厚さ | 1回で厚い塗膜をつくれる。垂れにくい | 薄く仕上げたい部材や、はめ合いの寸法が厳しい部材は事前に伝える |
| 強さ | 衝撃・摩耗・錆に強い | 屋外で使うか屋内かで、塗料の樹脂を選ぶ |
| 見た目 | 表面にゆず肌(細かな凹凸)が出やすい | 平滑さや艶の求める水準を、色見本などで共有する |
| 形状 | 金網やパイプのような細い部材は裏側まで回り込みやすい。箱の内角や深い凹部には付きにくい | 内側の塗装が必要な箇所を図面や写真で示す |
| 色 | 色ごとに塗料を用意し、色を替えるときはブースとガンの清掃が必要 | 色数が多い、標準にない色を使う場合は、早めに相談する |
| 溶剤 | 塗料に溶剤を含まないため、VOC(揮発性有機化合物)がほとんど出ない | ― |
粉体塗装に向く部材・向かない部材
向いている部材
- フェンス・金網・柵:細い線材の裏側まで塗料が回り込み、厚い塗膜で錆と衝撃から守れます。
- 架台・フレーム・パイプ:屋内外で使う鋼製の構造部材。
- パネル・カバー:建物や設備に取り付ける金属パネル。数枚の組で色と表面をそろえる管理が要ります。
- 盤の筐体・金属ケース:取り付け前の筐体や扉など、取り外して運べるもの。

向いていない部材・場面
- 熱に弱い素材や部品が付いたもの:樹脂・ゴム・木材など、焼付の熱に耐えられないものは塗れません。外せる部品は外してから塗ります。
- 炉に入らない大きさ・重さのもの:大きさと重さによって対応できるかが変わります。寸法と重さを先にお知らせください。
- 据え付けた設備・建物に固定された部材:現地で焼き付けることはできません。設置したまま塗る場合は出張塗装になり、常温で乾く塗料を使います。
- キズの部分補修:粉体塗装した製品のキズを直すときは、液体の塗料で色と艶を合わせて補修するのが一般的です。
粉体塗装が剥がれる主な原因
粉体塗装の塗膜は強い一方、次のような原因で剥がれや浮きが出ることがあります。多くは、発注の段階で情報をそろえておくことで防げます。
- 前処理の不足:油分・錆・黒皮(ミルスケール)が残ると、塗膜が素地に密着しません。素材と表面の状態を伝え、それに合った前処理を選びます。
- 素材と塗料の相性:溶融亜鉛めっきの面は、加熱でガスが出て塗膜に小さな穴や密着不良が出やすいため、めっきに合った下地処理が要ります。アルミやステンレスも、それぞれに合った前処理が必要です。
- 膜厚の偏り:曲面の端や角は薄く、くぼみには粉が溜まって厚くなりやすく、どちらも割れや剥がれの原因になります。
- 焼付の不足:温度や時間が足りないと硬化しきらず、塗膜が弱くなります。部材が厚く重いほど、温まるまでに時間がかかります。
- 今の塗膜との相性:すでに塗装されている製品に重ねる場合、古い塗膜ごと剥がれることがあります。

粉体塗装を依頼するときに伝えること
次の情報があると、塗れるかどうかと、仕様・費用・納期を早くお伝えできます。分かるものだけで構いません。
- 素材:鉄・アルミ・ステンレス・亜鉛めっきなどの別、すでに塗装されているか
- 大きさと重さ:図面または寸法、1点あたりの重さ
- 数量:1回の数量と、続けて発注する予定があるか
- 色と艶:色番号(日本塗料工業会の色見本番号など)や色見本、艶の程度
- 膜厚や仕様の指定:膜厚の指定、塗装仕様書の有無
- 塗らない箇所と吊るす穴:ねじ穴・はめ合い面・アースを取る箇所、吊るすのに使ってよい穴
- 使う場所:屋内か屋外か、水や薬品がかかるか
- 希望の納期と梱包:納品日、梱包や検査記録の指定
焼付塗装の依頼で見積りが止まりやすい項目と、その決め方は焼付塗装の依頼前に固める5項目|見積りが止まる原因で解説しています。粉体塗装でも考え方は同じです。
粉体塗装の施工事例
当社の施工事例から、粉体塗装の例を紹介します。
- 【粉体塗装】ボンデ鋼板柱カバーパネルの密着性を最大化!均一な膜厚管理:R形状のボンデ鋼板製の柱カバーパネルに、現場で上塗りする前提の粉体プライマーを塗装した事例です。脱脂・洗浄の前処理と、曲面でも膜厚がそろうようにガンの角度・距離・速さと焼付の温度を管理しました。
- 粉体塗装によるフェンス仕上げ|防錆性・耐候性に優れた施工事例:レジャー施設に設置する防獣用のワイヤーメッシュ柵を、耐候性のある粉体塗料でブラウン色に仕上げた事例です。
ほかの事例は施工事例の一覧でご覧いただけます。
株式会社ユーコーの粉体塗装
株式会社ユーコーは、大阪府大東市を拠点に、焼付塗装・粉体塗装の両方に対応しています。小物部材から長尺物・大型の重量物まで、部材の用途・数量・形状を伺い、粉体塗装と焼付塗装のどちらで塗るかの段階からご提案します。少量のご注文やお急ぎのご相談も承っています。
ご依頼は、お問い合わせ、お見積り、製品の受け取り、塗装・焼付け、検査・梱包、納品の順に進みます。据え付けたままの設備は、出張塗装で現地に伺って塗装します。
粉体塗装でよくあるご質問
焼付塗装と粉体塗装のどちらがよいですか
屋外で衝撃や錆に強い塗膜が欲しい場合は粉体塗装、薄く平滑で光沢のある仕上がりや、色数が多い小ロットには焼付塗装が向く傾向があります。部材の用途と数量を伺って決めます。比較の詳細は焼付塗装と粉体塗装の違いをご覧ください。
すでに塗装されている製品も粉体塗装できますか
今の塗膜の種類と状態によって、剥がしてから塗るか、表面を荒らして重ねるかが変わります。古い塗膜が浮いていると、その上に塗っても一緒に剥がれます。現物か写真で状態を確認したうえでご案内します。
少ない数量でも頼めますか
小ロットのご注文も承っています。数量と大きさ、色をお知らせいただければ、進め方と納期をご案内します。
色はどう指定すればよいですか
色番号(日本塗料工業会の色見本番号など)か、色見本・現物をお送りください。粉体塗料は色ごとに塗料を用意するため、標準にない色は塗料の取り寄せに時間がかかることがあります。
まとめ:粉体塗装とは、粉の塗料を焼き付けて厚い塗膜をつくる塗装
- 仕組み:溶剤を含まない粉の塗料を静電気で付着させ、炉で焼き付ける。
- 工程:前処理、吊り下げ・マスキング、静電塗装、焼付、冷却・検査・梱包。
- 向く部材:フェンス・金網・架台・パネル・盤の筐体など、取り外して運べる金属部材。
- 向かない場面:熱に弱い素材、炉に入らない大きさ、据え付けた設備、キズの部分補修。
- 剥がれを防ぐには:素材・めっき・今の塗膜・使う場所を発注時に伝え、前処理と膜厚・焼付を管理する。
粉体塗装で塗れるかどうか分からない段階でも、図面や写真をお送りいただければご相談いただけます。
工場・プラントの塗装、設備機械の塗り替え、焼付・粉体塗装のご相談を承っています。
図面や現況写真をお送りいただければ、可否と概算のご回答が可能です。
お電話:072-800-8107(平日9:00〜17:30)
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執筆:株式会社ユーコー(工場・設備の塗装と補修/大阪府大東市)